私たちは、日本海洋学会の中でもとがったアイデアを出してドンドン実験し、挑戦していくグループ「日本海洋学会ブレークスルー研究会」のメンバーです。海洋学の中でも、流れを読み解く物理、成分の違いを紐解く化学、豊かさを推し量る生物など、さまざまな専門のメンバーが集っています。取り組み方も、現場の海に船で出かける者、衛星のデータを解読する者、数式を操りコンピューターシミュレーションする者、など様々です。場所や時間も、私たちに身近な沿岸の海を細かく調べたり、グローバル展開して考えたり、過去、現在、未来を行き来したり、と興味の違いでいろいろな海洋学者が集っています。でも、とにかく共通する想いは一つ。「海って最高!!!」ってことです。それをみんなに伝えたい。分かって欲しい。大切な日本の未来のために、知ってもらわなきゃいけない。チャレンジすべきことはまずは本気でやってみる。そんな染み渡るような、噛みしめるような、とっても熱い想いを抑えきれない海洋学者の集い、それが「ブレークスルー研究会」なのです。

 

【研究会の趣旨】

ある学問領域は、発見的研究として始まるが、その進展と共に学問基盤を確立する研究となって隆盛し、その後は成果を社会に応用する研究が主となる。最近の海洋科学分野の研究でも、海洋科学が重要であることはよく認識されているものの、この第二から第三の段階に移る中で、「より詳細に、より厳密に、より社会還元を」という従来の概念・手法を拡張する路線が強調されすぎているように見えます。この結果、現在進められている種々の研究が今後直面するであろう限界を打ち破る可能性を秘めた新たな研究(ブレークスルー研究)の推進が阻害されていることが危惧されます。

 

ブレークスルー研究は先見性のある個人が進めるとしても、それを支える広い基盤、さらに実証・実用へ展開する研究もまた必須です。例えば、以前は学問的に見えていなかったものが、新たな観測・分析の開発、およびシミュレーション・理論の進歩によって画期的に展開する可能性を持つことになるでしょう。また、他分野からの参入、そして他分野との融合がさらなる展開を促すことも考えられます。従って、ブレークスルー研究の推進には、

 
(1) ブレークスルー研究の創出のための意見交換・情報交換・企画草案づくり
(2) ブレークスルー研究を支えるための基盤整備(人材育成、学会の雰囲気づくり・支援体制)

の両者は必須です。
 
しかし、現状では、上記2点は十分なレベルには達していないと言わざるを得ません。我々はこの現状を打開する方策として、2010年海洋学会春季大会からさまざまな試行錯誤のもと多くのシンポジウムを開催してきました。その議論を踏まえ、ここに、日本海洋学会にブレークスルー研究の推進とその基盤形成のための手段を検討・実施することを目的とする研究会を発足させます。なお、当該研究会は、日本海洋学会将来構想委員会や各研究会ならびに関連学会とも連携して、日本海洋学会の現状を鑑み、将来を見据えながら、議論と情報交換を進めます。